出過ぎた杭は打たれない

ここは途中だ 旅の何処かだ

冷然とした東大理系卒の雑記帳

日本の「決済システム」問題

 就活をしていると、私が本当にしたいことは何か、思考を巡らす機会が多い。そんな中、今までの経験から取り組んでみたい問題がふと浮かび上がったので幾つか書いてみる。

 

 第一回は日本の「決済システム」だ。

 

 

まず私はどういう人間だったか

 まず、私が大学以前どういう性質の人間だったかを書いておく必要があると思う。私は物心ついてからずっと東京で育ち、日本の他の地域は観光で行くぐらいで、海外は全く行った事がなかった。そんなバックグランドだったので、大学ではなるべく違う世界に触れようとしてきた。

 

地方におけるモータリゼーションの進行、運輸業におけるハードの劣化

 学部2年の時(2017年度)、大学主催のプログラムで交通をテーマに鹿児島県の北薩地域を調査した。そこで、自分の中で衝撃的だったことが二つある。一つ目がモータリゼーションが非常に進行している事だ。鉄道による大量輸送が可能な都会とは違い、地方では過疎地域になればなるほど住居や店舗機能が点在化し、移動は全て自動車で行う必要がある。特に高齢者は買い物や通院などはデマンド交通を使うか、デマンド交通が無い時間帯やそもそもデマンド交通が通っていない場合は自分で運転せざるを得ない。実際に地元の複数の家庭に民泊という形で何回かホームステイをさせていただいたが、都会暮らしに慣れてきた私にとって自動車での移動は足が手持ち無沙汰になる感覚を味わったのを覚えている。鉄道が通っていると駅まで歩いて行くので、足を普段よく使うからだ。自治体職員の方が「地方の人の方が都会の人よりも運動不足になるかもね」と仰っていたのも印象に残っている。実はこの一つ目は今回の議論にはあまり関連しないのだが、次回の議論に深く関わるので敢えて書いておいた。

 二つ目は運輸業におけるハードの劣化だ。止まらない人口減少による利用者の激減の中で、地域に根差した鉄道やバス事業者では車両の更新が難しくなっている。特に印象に残っているのが両替機の劣化だ。運賃箱にお釣りを計算して返す機能が実装されていない事が多く、料金ぴったりで出さないといけない。その為小銭がない場合は必然的に両替機を利用する訳だが、千円札が吸い取られたまま何も返ってこなかった経験が二度あった。ならば電子マネーを導入すれば良いのではないかと思うのが都会的な発想なのだが、これが意外に厄介で決済システムの導入に莫大なお金がかかり、導入できないのが実情だというのをある地方鉄道の担当者に伺った。

 

上海で感じた電子決済の可能性

 学部3年の時(2019年)、これまた大学のプログラムで中国の上海に行った。中国はクレジットカード決済導入の波が来なかった為、QRコード決済導入の波が一気に押し寄せていた(リープフロッグ現象)。普及した背景としては偽札の防止に役立つからだという。小さな飲食店は勿論、ホームレスですらQRコードを持っているのが印象的であった。QRコードを使って物乞いをするのは非常に現代的な光景であった。QRコード決済は極端な話、ハード面では読み取り機の導入コストがゼロにでき、QRコードさえ用意できれば良い。つまり運輸業で言えば両替機が不要でそもそも運賃箱もいらない。

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左下あるいは右下にQRコードがある。青がAlipay(アリババ)、緑がWeChatPay(テンセント)

 最近政府が電子決済の普及を推し進めているが、これは都会よりは地方にとって非常に有益なことだと私は感じていた。ただ気を付けないといけないのが、都会の資本が入って推し進めると結局地方のお金が都会の企業に流れる構造になり、地方を潤す結果にはならないということだ。その構造に不満を持っている地元の方もいた。

 そうはいっても私は、決済システムにおけるQRコードの可能性を感じている。

 

 次回は「人が足りない」について書いてみようと思う。