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冷然とした東大理系卒の雑記帳

【映画観賞録 その1】ボヘミアン・ラプソディ

 

映画の概要

 『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)はロックバンドQueenを描いた映画である。Queenと聞いてピンと来ない人も、CM等でWe Will Rock You、It's A Beautiful Day、I Was Born To Love Youといった楽曲を聴いたことがあるに違いない(この3曲を挙げたのはQueenのアルバムを聞いた時に「これは彼らの曲だったのか!!!」と特に衝撃を受けたからである。I Was Born To Love YouについてはボーカルのFreddie Mercuryのソロ由来の曲であるが)。

 

 

 

私のQueenとの出会い

 小さい頃、特にテレビCMを通じて彼らの楽曲は聴き慣れていた。その頃はまだQueenの楽曲と認識してはいなかったが。また『魁!!クロマティ高校』という漫画でボーカルのFreddieの姿形は見たことがあった。

 


 

 

 Queenを本格的に聴き始めたのは高3の時からである。なんとなくWe Will Rock Youを聴いてみようと思ったのが最初である。そこからはYouTubeの公式チャンネルの動画を漁った。Queenのライブ映像もよく観た。そして初めて買ったCDアルバムがA Night at the Opera、News Of The World、GREATEST HITS vol.2であった。CDが売れないこの時代にわざわざCDを買ったのは、iPodでいつでも聞く為、印刷された歌詞の入手の為、そしてライナーノーツ(解説文)を見てみたいが為であった。

 


 

 

 私がハマってしまったのは彼らの音楽性からも勿論であるが、この映画でもフォーカスされているボーカルのFreddie Mercuryに惹かれたからである。特にモントリオールでの半裸でステージ上を動き回る、溢れんばかりの自信と堂々とした佇まいは当時高3の自分にはかなり衝撃的だった。こんなに堂々として良いのだと。大きな態度を取ること、一歩踏み出すことが恥ずかしいと感じていた当時の自分にとってFreddieの存在は私に勇気を与えた。

 


 

 

 

映画の感想

 まず、第一に再現性が素晴らしい。役者の役作りへの努力がすさまじいものであったことが見てとれる。特にFreddie役のRami Malekはすごい。下手すればネタに終わりそうでもあるFreddieをカッコ良く演じきったのにはかなり感動した。

 また、145分と長尺であるがテンポが良く退屈さがなかった。まだ詰め込みきれてない情報(1986年のWembley StadiumでのLiveがQueenとしての絶頂期だと個人的は思うが、それも取り上げようとすれば、もっと長尺であっただろう!)もあったし、映画の中でとりあげきれなかった名曲も沢山あるのが(Save Me、Spread Your Wings、Friends Will Be Friendsなど挙げればキリがない)、このバンドの凄まじさを物語っている。

 


 

 

 以下は映画の中で描かれているFreddieを観て感じた感想であり、本当のFreddieはまた違うかもしれないことを一応断っておく。というのも様々なレビューで指摘されたことだが、描かれている各出来事は事実であるものの、演出上ドラマティックにする為、時系列を実際とは多少入れ替えているからだ。

 誰であれ孤独を感じる時もあるし、一方でその孤独にいくら追い込まれても、絶対に守りたい矜持がある、そんなことを思い起こさせる映画だった。

 Freddieにとっての孤独は自身が民族的、性的マイノリティに起因するものとして描かれている。映画の中では理解し合える真の家族を見つけようとするもなかなか見つけられない人物として描かれている。

 Freddieにとっての矜持はミュージシャン及びパフォーマーとして人生をまっとうしたいという、音楽や観客への彼の誠実さから生じている。実際に映画の中で彼は快楽主義に陥っていたが、LIVE AIDの出演依頼を隠した自分勝手な愛人に激怒している。

 彼は音楽によって孤独を昇華させた。自分にはそのように本気で打ち込めるものはまだないかもしれない。これから模索していきたいと思った。

 

 

これから観る方へ

 Queenを一通り聴いた方が勿論楽しめるだろうが、これから聴こうと思っている人はその導入として最適だろう。劇中の台詞内にも前提知識が必要とされるものが多少含まれている(A Night at the Operaの曲が話題に出てくるが曲自体は流れない)。その為、Queenに関する知識が皆無な人には少々退屈かもしれない。しかし、終盤のLIVE AIDの再現は壮観である。鑑賞後、本物のLIVE AIDの映像と合わせて見てほしい。製作陣の本気度が伝わってくるはずだ。

 Freddie自身が一番好きだったと言われているQueenの楽曲が最初に流れたり、Queenと共に名曲Under Pressureを作ったDavid Bowieが最初にちらっと出てきたりとQueenに聴き慣れている私も納得の作品であった。

 

 We Are the Champions !!!